7月の夜や雨上がりの夕方に、窓辺の光や街灯に大量の羽アリが群がるのを見たことはありませんか?
普段「羽アリ」として目にする虫の中には、よく知られるクロアリだけでなく、シロアリが混じっていることもあります。シロアリは家の木材を食べてしまう厄介な害虫で、放っておくと住まいの耐久性が大きく損なわれる恐れがあります。そのため、見過ごしてはいけない存在です。
そこで本記事では、シロアリ駆除の専門家が「7月の羽アリ」の正体や具体的な対処法をわかりやすく解説します。大切な住まいを守るためにも、まずは羽アリに関する正しい知識を身につけましょう。
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そもそも「羽アリ」とは?
「羽アリ」とは、クロアリやシロアリが繁殖期になると、巣から一斉に飛び立つ羽のある個体を指します。
シロアリの羽アリ
クロアリの羽アリ
普段、街中や公園で見かけるクロアリが羽をつけて飛び立つイメージが強いかもしれませんが、実はシロアリも同じような繁殖方法をとります。
コロニーが成長して大きくなると、一部の個体が羽を持つようになり、巣の外へ飛び出します。そして、新しい巣を作り、王アリや女王アリとして新しいコロニーを築いていくのです。
「7月の羽アリ」はシロアリの可能性がある?
羽アリが現れるタイミングは種類によって異なりますが、雨上がりや湿度が高い時期に特に活動が活発になります。
そのため、日本では梅雨が始まる5月下旬から7月頃にかけて、大量の羽アリが目につきやすいのです。夕方や夜、照明の周りに羽アリが集まっているのを見かけたら、まずは「どんな羽アリなのか」を見極めることが大切です。
羽アリの種類ごとの発生時期をまとめると、以下のようになります。
この図を見るとわかるように、7月はヤマトシロアリの羽アリは姿を消しますが、イエシロアリやアメリカカンザイシロアリの羽アリが飛び立つ時期にあたります。
「家の中で羽アリを見つけた」「近所やベランダで大量の羽アリを見かけた」といった場合は、シロアリの可能性も考えられます。放置せず、早めに確認することをおすすめします。
「シロアリの羽アリ」と「クロアリの羽アリ」を見分ける方法
シロアリの羽アリとクロアリの羽アリは、見た目がよく似ているため、どちらなのか迷ってしまうことがよくあります。
しかし、「触角の形」「胴体のくびれ」「羽の大きさ」など、いくつかのポイントを押さえれば簡単に見分けることができます。
シロアリ:腹部のくびれが無く、前羽と後羽の大きさがほぼ同じ。触覚が数珠状。
クロアリ:腹部のくびれがはっきりしており、前羽のほうが後羽よりも大きい。触覚はくの字。
7月に羽アリを見つけたら、これらの特徴をよく観察してみてください。シロアリかクロアリかを正しく見極めることで、適切な対応を取ることができます。
さらに詳しい見分け方については、次の記事で解説していますので、ぜひチェックしてみてください。
「7月の羽アリ」がシロアリだとどのような問題が起きる?
もし7月に見かけた羽アリがシロアリだった場合、住まいに深刻な問題が起こる可能性があります。
シロアリは木材を主な栄養源とするため、家の柱や床下、壁の内部を食べてしまい、建物の耐久性を大きく損ないます。被害が進むと、床が傾いたり柱が空洞化したりするなど、深刻な問題に発展することもあります。最悪の場合、リフォームだけでなく建て替えが必要になるケースもあります。
さらに厄介なのは、シロアリ被害は「気づきにくい」という点です。外見ではほとんど変化が分からず、床や柱の内部がボロボロになってから初めて被害に気づくことが多いのです。
また、シロアリは群れで移動し、コロニーをどんどん拡大していく習性があります。そのため、羽アリを見つけた時点で早急に対応しないと、被害が家全体に広がり、修復がより難しくなる恐れがあります。
7月に発生する羽アリ――「イエシロアリ」の脅威とは?
日本でよく見られるシロアリには、「ヤマトシロアリ」と「イエシロアリ」が代表的です。ヤマトシロアリは4~5月に羽アリが飛ぶピークを迎えますが、イエシロアリは少し遅れて6~7月に群れをなして飛ぶ「群飛(ぐんぴ)」が見られます。
そのため、7月頃に大量発生した羽アリがシロアリだった場合、それはイエシロアリである可能性が高いと考えられます。
イエシロアリは、一つのコロニーに非常に多くの個体が存在するだけでなく、広い範囲に巣を拡大する習性があります。そのため、被害が広範囲に及びやすいのが特徴です。
さらに、ヤマトシロアリと比べて、イエシロアリは非常に活発で、木材を食害するスピードも速いため、被害が短期間で深刻化しやすい傾向があります。
もしイエシロアリが家の床下や壁の中に侵入していた場合、被害は予想以上に速いペースで進行する可能性があります。7月はちょうどイエシロアリの活動が活発化する時期なので、特に注意が必要です。
7月の羽アリは「アメリカカンザイシロアリ」の可能性も
上述の通り、7月に発生する羽アリの中には、アメリカカンザイシロアリである可能性もあります。
アメリカカンザイシロアリはアメリカ原産の外来種で、ヤマトシロアリやイエシロアリとは異なる独特の生態を持っています。日本国内での被害例は少ないものの、一度被害が発生すると深刻な影響を及ぼす害虫として知られています。
アメリカカンザイシロアリを含む主要なシロアリ3種類について、実際の羽アリの姿を撮影した写真をご覧ください。
また、それぞれの羽アリの特徴を以下の図にまとめています。
アメリカカンザイシロアリの被害の特徴
アメリカカンザイシロアリの生態や被害の特徴を整理すると、以下の通りです:
床下から侵入しない:羽アリが直接飛来し、そのまま住宅内に住み着きます。
乾燥した木材を食害:湿気に依存せず、乾燥した木材を好みます。
砂粒状のフン:被害を受けた住宅では、屋内に砂粒のようなフンが落ちることがあります。
一般的なシロアリ対策が効かない:床下を経由しないため、通常のシロアリ防除施工が効果を発揮しにくいです。
駆除が難しい:確実な駆除方法がまだ確立されていません。
もし羽アリがアメリカカンザイシロアリである可能性を感じたら、早めにシロアリ駆除業者に相談することを強くお勧めします。
さらに詳しい情報については、次の記事で詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
「7月の羽アリ」がシロアリだった場合の対処法
7月に見かけた羽アリが「もしかしてシロアリかも?」と思ったら、以下の手順で適切に対処しましょう。
羽アリを掃除機で吸い取る
羽アリを見つけたら、掃除機で吸い取りましょう。シロアリは風に弱く、掃除機で吸い取るだけで簡単に駆除できます。また、掃除機の中で繁殖する心配もありませんので、安心して対応できます。
羽アリの発生場所を特定して穴を塞ぐ
羽アリが出てきた場所を特定したら、ガムテープなどを使ってしっかりと塞ぎましょう。シロアリは何度かに分けて羽アリを飛ばすため、穴を塞ぐことで後続の羽アリの発生を防ぐことができます。
専門のシロアリ駆除業者に相談する
応急処置が終わったら、専門のシロアリ駆除業者に相談しましょう。
シロアリの被害は外からでは分かりにくく、自己判断で「大丈夫」と放置してしまうと、知らないうちに被害が拡大し、深刻なダメージを受ける可能性があります。プロの業者に調査を依頼すれば、被害の有無やその程度を正確に確認し、最適な対策を提案してもらえます。
次の記事では羽アリを見つけたときの詳しい対処法を解説しています。ぜひ参考にしてください。
7月に現れる「羽アリに似た昆虫」
7月には、シロアリやクロアリの羽アリだけでなく、羽を持つさまざまな昆虫が発生します。以下は代表的な昆虫です。
クロバネキノコバエ
クロバネキノコバエは小型のハエで、一般的に「コバエ」と呼ばれる種類のひとつです。プランターや植木鉢の周辺でよく発生し、特に梅雨の時期に大量発生しやすいことで知られています。
ただし、シロアリとは異なり、家屋に被害を与える心配はありません。
体長はわずか1mm~2mmほどしかないため、シロアリの羽アリとは簡単に区別できます。
ノミバエ
ノミバエは「コバエ」と総称される小型のハエの一種です。不衛生な場所を好み、ゴミや腐敗した食品がある場所で大量発生することがあります。
体長は2mm~4mmで、羽アリと比べるとかなり小型です。この特徴を知っておけば、簡単に区別できます。
羽アリに似た昆虫は他にも多く存在します。次の記事で詳しく紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
ただし、「羽アリではないから大丈夫」と安心していたら、実際にはシロアリだった、というケースも少なくありません。
もし判断に迷った場合は、虫の写真を撮ってシロアリ駆除業者の専門家に確認してもらうのがおすすめです。シロアリでなかった場合でも、確実に判別することで安心できますし、万が一シロアリだった場合でも、迅速に対処を進めることができます。
他の時期に現れた羽アリについて
羽アリが発生する時期ごとに詳しく解説した記事をご用意しています。ぜひ参考にして、適切な対応を検討してください。
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